ぷるぷる大陸物語 第5話 ~寡黙な美食家の探求1~
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今回のターゲットはチェリートだ。
チェリートは足の速い動物なのだが、食べるととても美味しいとされている。
チェリートの肉は希少な事で知られていて、100グラムで1万リポ以上する高級肉だ。
俺は人生で1度しか食べた事が無いが、あまりの美味しさにチェリート狩り専門の魔術師になりたいと思ったほどだ。
なぜチェリートが希少で高級肉となっているのかというと、非魔術師には狩る事ができないとされているからだ。
足が速いだけなら、弓を使えば狩る事ができるのだが、チェリートは風の魔法を使う為、弓矢が通らないのだ。
魔術師でもその風魔法と足の速さに翻弄される為、なかなかチェリート狩り専門の魔術師は少ない。
チェリートを狩れる程の魔術師なら、わざわざ逃げ回り狩りにくいチェリートではなく別の魔獣を狩り高収入を得る方が楽なのだ。
このような理由がある為、俺はなんとかチェリートの安定供給を望んでいる。
いや、望みなどという軽い気持ちではない。俺の使命なのだ。
まずはサネアツの所へ弓を取りに行った。
「おい、前持って行ったボールと水風船の代金よこせ。2千リポだ。」
サネアツはいつも細かい。
「ウリリーの件でお前も儲けただろ?忘れろ。それより弓よこせ。」
「2千リポが先だ。あと弓は矢もセットで1万リポだ。」
サネアツは俺がウリリーの一件で収入を得た事を知っている。ツケは使えそうになかった。
しかたなく1万2千リポを渡した。
弓は一張しかなく、到底1万リポとは思えなかったが、適当に拾った。
「こんな棒きれが1万リポか?ボッタクリやがって」
捨てセリフを吐いて出て行った。
お気楽3人衆を呼び出しプルプール大森林へチェリート狩りに出かけて行った。
「ねえ、チェリートに弓は効かないんじゃない?」
トルキンエが訝しげに聞いてきた。
「今日狩る気は無い。ただチェリートの魔法をこの目で見たいだけだ。」
黙々と歩く事小一時間で、チェリートが生息する場所まで辿り着いた。
そこは少し開けていて草が生い茂っていた。チェリートはこの草を好んで食べる。
暫くするとチェリートが数頭やってきた。
自分の魔法に自信があるのか、それほど警戒している様子は無い。
少しの間、草を食べるのを観察して中央辺りに来た1頭に狙いを定めて弓を引いた。
次の瞬間、強風が吹いて弓は上空へ弾き飛ばされた。
一瞬の出来事だった。
風と共に草や木の葉が舞い視界が悪くなり、風が止む頃にはチェリートは居なくなっていた。
チェリートがいた辺りがもやもやと揺らめいていた。
「よし帰るか。」
俺はそれだけ言うとその場を後にした。
「俺たちは何の為に呼ばれたんだ?」
ユエルドは少し不満そうだ。ウリリーの時のような戦いを想像いていたのか?
やはり魔術師となった男は、闘争心が高いのかもしれない。
「お前たちは保険だ。役目が無い事は良い事だと思え。」
俺はそう切り捨てた。
街に戻りユエルドとトルキンエは酒場という野に帰して、俺はアストリアと共にプルニーの様子を見に行くことにした。部屋に入ると、プルニーが跳び回っていた。
怯えていた頃とは大違いだ。
俺はアストリアの手を握りプルニーに話しかけた。
『プルニー、仕事だ。』
『ふぇ?』
『魔法を覚えろ。』
『むりー。魔法使えないもーん。』
『あのな・・・これから覚えるんだよ。』
『えー?』
『水だ。水をイメージしてみろ。』
『みずってなにー?』
な、なに?
俺は水道からコップに水を汲んでプルニーにぶっかけた。
『これが水だ。』
「ちょっとハインツ。部屋汚さないでよ!」
「うるさい。汚していない。乾けばなんともないだろ。」
アストリアは膨れていたが無視だ。
『分かるか?』
『わかるー!あめー!』
雨か。まあ伝わったのならそれでいい。
『自分の体から水を出すイメージだ。やってみろ。』
プルニーは応えない。こいつなりに頑張っているのかもしれない。
暫く待ってみたが全く動きが無いので少し心配になってきた。
『大丈夫か?』
と言ったのと同時だった。
プルニーの頭上にプルが集中し、それは水に変わった。
ビシャッ!
その水はアストリアの顔に直撃した。
『すごいぞ!良くやった!』
「ハインツ?」
アストリアに呼ばれた気がしたので振り向いた途端、
パシッ
平手を食らった。
アストリアには、プルニーが魔法を使えた事の凄さは伝わらなかったらしい。
「もーもー!」
プルニーは初めて魔法を使えた嬉しさで部屋の中に水の魔法を撃ちまくり、アストリアはバケツを持って走り回っていた。
「楽しそうだな。その調子で頼む。」
計画は順調だ。