心に噺がおじゃましまっす!

心の端にそっと置いてもらえるような物語を目指して書いています。

寄生虫


ある日僕は体に不思議なものを見つけた。それは最初は動かなかったが、時が経つにつれて成長して動くようになった。しかもそれは次々に増えてゆき体中に広がっていった。
友達は僕とは違い体に動くものはいない。だからいつもいじめられていた。
僕には先生がいる。先生はたまにしか会えないが色々なことを教えてくれる。だから僕は先生に聞いてみた。
「それは寄生虫っていうんだ。駆除したいなら方法を教えるよ」
先生はいつも優しい。でも僕は駆除することは考えていなかった。とくに害はないし友達と違うからといって同じにならなければいけないとは思っていないからだ。
「もう少し様子をみます」
「そうだね。また何かあったら聞いてね」
先生はそう言うとまた去って行った。
ある日友達が妙なことを言い出した。
「お前の寄生虫が俺のところまで来たぞ。早く何とかしろ」
それは信じられないことだった。なぜならその寄生虫は僕の体でしか生きられないと思っていたからだ。どうせ僕をいじめる口実を作りたかっただけだろう。


僕はついに寄生虫の声を聞くことができた。その寄生虫は僕に名前をつけていた。僕の名前は『地球』だ。僕は誇らしかった。友達は誰も自分の名前を持っていない。もちろん僕の寄生虫がつけてあげているけれども。
また先生がやってきた。
「どうかな。駆除する気になったかい?」
「いいえ。僕は駆除するつもりはありません。だってこれも個性だと思うから」
「いじめられていると聞いたけれども大丈夫かい?」
「大丈夫ですよ。彗星先生」
「彗星ってなんだい?」
「僕の寄生虫が先生の名前を付けたんです」
「それはありがたいことだね」
先生は誇らしげに去ってゆくのだった。